ヒヤシンスの花

ヒァキュントスはギリシア南部ラクダイモンに生まれた美しい少年でした。
彼は美しいばかりではなく、戦いやスポ−ツにも優れた才能を持っていたので神々にも愛されていました。

その中でもアポロンと[西風の神]ぜフロスは、この美少年を自分に仕えさせようと互いに争っていました。
この争いではアポロンが勝ちました。

アポロンは大神ゼウの子というだけではなく、神々の中でもT番権力のある神のT人で最も男らしい美貌の神でした。
こうしてヒァキュントスは何処へ行くにもアポロンのお供をする様になりました。

ある日2人が円盤投げをして遊んでいた時の事です。

2人は競技場の西と東に分かれて、どちらが遠くまで円盤を投げる事が出来るか競争する事になりました。

始めにヒァキュントスが投げた円盤は高く飛んで行って、反対側にいるアポロンの足元にまで届きました。

アポロンは円盤を拾って力任せにヒァキュントスの方に投げ返しました。

円盤は高く飛んで行って雲の上まで届きました。

その円盤を[西風の神]ぜフロスが見つけました。

アポロンとヒァキュントスを怨んでいたぜフロスは、強い風を吹き送りました。

円盤は風にあおられてヒァキュントスめがけて飛んで行き、彼の頭に激しく当たりました。

アポロンが真っ青になって駆け付け、ヒァキュントスの手当てをしようとします。
しかし頭からの出血が酷く既に手遅れでした。

アポロンに抱え上げられたヒァキュントは、まるで折れた花のようにガックリとうなだれていました。

アポロンは自分が殺したも同じだと胸をかきむしられる思いで泣き叫びました。

アポロンの叫びが響くとヒァキュントスの血に染まった辺りの草が青々となって、そこに美しい一輪の花が咲きました。

アポロンは、その花びらにヒァキュントスを記念する為にAとYの文字を刻みます。

「あぁ、悲しい…」
(ギリシア語)

アポロンはその花にヒァキュントス(ヒヤシンス)と名付けました。

またトロイ戦争の勇士アイテスが自殺した際に大地に染みた血からヒヤシンスの花が咲き出したという説があります。
アキレウスが死んだ時、母親のテティスは[鍛冶の神]へパイストスが作ったアキレウスの鎧兜を生き残ったギリシア軍の中で最もふさわしい者に与えようと言いました。

候補者として名乗り出たオデュッセウスとアイアスが審判に架けられて結局、知恵者のオデュッセウスにアキレウスの鎧兜は与えられました。
そしてアイアスは自殺してしまいました。

その時に咲いたのがヒヤシンスで、花びらにはアイアスの名前の最初の二文字「AI」という字が現れていたといいます。
「AI」もギリシア語で「悲しい」という意味です。

ヒヤシンスの花になったのはヒァキュントスとアイアスという説とがあるのです。




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