波乱なる巫女イオ
【イオと一緒のゼウスを見つけたヘラ】


イオはアルゴスにあるヘラ神殿の美しい巫女でした。

ある日イオは夢を見て神託を得ました。

「レルネ湖に赴きゼウスに身を任せ結ばれよ」

イオは湖に出掛けて行き、月光の中で雲に化けたゼウスと結ばれました。

この事は直ぐに正妻ヘラの知るところとなります。
嫉妬深いヘラはゼウスの浮気現場を押さる為に2人がいる所に踏み込んだのです。

ゼウスは事前にイオを牝牛に変身させていました。
しかしヘラはこの牝牛がイオの変身した姿である事は先刻承知でした。
ヘラがゼウスに詰め寄ってもゼウスは知らないフリを通します。

しかしヘラにはお見通しでした。
彼女は知らないフリをしてゼウスに問いました。

「貴方、こんな所で何をしているの?」

「牛を見ていたんだ。
綺麗な牛だろ?」

「そうね。美しい牝牛だわ。
私に下さる?」

ゼウスは躊躇したが仕方なくイオをヘラに渡しました。

ヘラは牝牛を百眼の怪物アルゴスに見張らせます。

ゼウスはアルゴスの見張りのせいで隙を見てイオを助け出す事が出来ません。
そこで息子ヘルメスを呼んでアルゴスを退治して牛を盗んで来るよう命じました。

しかし流石のヘルメス神も目が百個もある怪人には困り果てます。
アルゴスが眠っている間に盗もうとしても1個の目が眠っていても他の目が眠らないからです。

そこでヘルメスは美しい音色の笛を操る事が出来たので、その笛を吹くと百の目は一斉にうっとりとなり、やがて眠りに着きました。
そしてアポロンから貰った杖でアルゴスの頭を叩き潰して全ての眼を瞑らせて命を奪い牡牛になっているイオを助け出しました。

後にヘラはアルゴスの死を悼み百の眼を飼っている鳥の羽に移しました。
その鳥が現在の孔雀です。

アルゴスが死んでもイオの変身は解ける事なく、ヘラは追及の手を休めません。
ヘラは巨大な虻を牡牛のイオの元に送り針でイオの身体を刺しまくらせて苦しめます。
以後、世界中の牛たちは尻尾で追い払っても払い切れない虻に苦しむ様になりました。

イオは海を渡ってエジプトにまで逃げました。
この時、イオが渡った海が
cボスポロス海峡[牛の渡し]
cイオニア海[イオが渡った海]

エジプトまでイオを追い詰めるヘラを見てゼウスは降参しました。
ヘラの怒りは溶けてイオはナイル河で元の姿に戻されました。

現場に居合わせたエジプト人たちはナイル河を牛が泳いでいる事だけでも驚いていたのに牛が美女に変身した事に2度驚かされたのです。

イオはエジプトの地でゼウスの子エパポスを産んでエジプトの女王となりました。

そしてイオはエジプトで[イシス女神]として崇められて牛も神として扱われるようになりました。


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